社会・文化
質 問
イヌイットの人たちは寒さを防ぐためにどのような工夫をしていますか。
山形県 鷹巣小学校 小学5年 佐々木実結
回 答
スチュアート ヘンリ(放送大学)
イヌイット達はマイナス三十度、四十度の寒さを防ぐため、とても暖かい服を着ています。基本的にはその材料となるのは動物の毛皮です。そして、その目的に応じて材料(色々な動物の毛皮)が選ばれています。例えば、カリブーの毛は軽くて暖かいため、乳幼児の服へ、重いが非常に暖かいホッキョクグマの毛皮は、寒風にさらされるハンターの服へ、防水が要求されるブーツにはアザラシ皮、というような具合です。
ヨーロッパから来た初期の探検家の多くは、エスキモーが太っているという記録を残しています。実際は、ゆったりとした作りの服を重ねて着ていたので、太って見えただけです。欧米人の目に不格好に映ったこのような服装は、実はとてもすぐれた防寒服だったのです。カリブーの毛皮で作った二枚重ねの冬服を着ていると、長時間マイナス五〇度の中で活動することができます。しかも、このような冬服はわずか四・五キロしかありませんでした。
しかし、暖かいイヌイットの服にも欠点がありました。それはエスキモーの防寒服が「呼吸」をしない(皮膚から蒸散される汗などの水分が逃げて行かない)ということです。蒸発せずに皮膚や服の内側に水滴となってたまるとそれが凍りつき、体を冷やし、凍傷になってしまいます。ですから、イヌイットの服は適切な換気によって汗をかきにくいように作られています。そして、エスキモーは機会があるごとに服を乾かしたり、濡れた物を交換したりして対応してきました。