地球温暖化の原因とメカニズムについて教えてください。 田中 実(30代 鹿児島県)
2004年 3月28日


地球温暖化の原因とメカニズムについて詳しく教えてください。 地球の浄化再生能力をこえた人間生活に起因するものであれば具体的な例をあげてください。 又、温暖化の進み具合は、北半球と南半球で差があるのでしょうか?














回答 岩坂泰信(名古屋大学)
2004年 5月10日


地球温暖化の原因とメカニズムについて詳しく教えてください。

温暖化の原因とメカニズムについて詳しく説明とのご要望ですが、 理解するためにはかなり広範囲の基礎知識が必要ですのでメールでのやり取りで仰望を満たす事が不可能と思われます。 説明とあわせて、いくつかの本を紹介しますので(大学学部レベル)合わせてそれらを読みながら考えて下さい。

地球温暖化とは何を指すとお考えでしょうか? 地球温暖化=気温の上昇でしょうか?  現在、環境科学では地球温暖化といった場合には、 温室効果ガス濃度の上昇によってもたらされる地球表層の熱収支の変動によって引き起こされる(熱や気温に絡んだ)現象を指すようになっています。

いいかえるなら、温室効果ガスの濃度増加が原因となってもたらす現象がきわめて多様であり、 それらが複雑に絡み合っていることを暗に示しているものと考えられます。

ここまで来ると原因は何かという質問に対する答えは、簡単なようであり、 とても10枚やそこらのレポートには収まらないことにもなる状況を理解してもらえたと思います。

温室効果気体の濃度増加が原因です。その先の現象も含めた意味での地球温暖化を考えていらっしゃるなら、 地表面の水循環、海水の運動、大気エアロゾルの組成と分布、などを考えに入れた原因となります。
『岩波講座 地球惑星科学 3 地球環境論』62−70ページおよび101−112ページを参考にして下さい。

メカニズムについても同様に、温室効果ガスの上昇から引き起こされる地表面に向けての大気放射の増大が基本のメカニズムです。 地面からの水蒸気の蒸発あるいは植物を通した水蒸気の上発散などに変化が無ければ、 地表面はこれまで以上に放射を受けるために地表面温度は上昇します。 このあたりの説明は、放射の定義、放射収支の考え方、大気の射出率、 などはじめ、いくつかの基本的な物理の量や規則を復習する必要があります。
『岩波講座 地球環境学 3 大気環境の変化』の124−127ページを参考にされることをお勧めします。

しかし、はじめに言いましたように、地球の表面は、海あり、陸あり、植生あり、水分あり、・・でして、 大気からの放射が強まるとそれに応答します。 地面温度が上がろうとすれば水蒸気がどんどん蒸発して地表面から熱を奪ってゆきます。 このために、放射の増大に対して地表面や地表面付近の大気の温度が高くなると簡単にはいえなくなります。 いろいろなプロセスが相互に関係しあった後に出現する地表面の温度状態を知る必要があります。 いまだにたくさんの研究者が地球温暖化にかかわっているわけはこの種の複雑さが大きな原因でしょう。

地球の浄化再生能力をこえた人間生活に起因するものであれば具体的な例をあげてください。

地球の浄化再生能力がどの様なものであるかわかっていないのですから、 それを超えた人間生活とはどの様なものかわかりかねます。 そのように捕らえにくい概念よりも、いまの生活(これは、多種多様な生活がありますが、 しかし現実の我々の生活ですので、ある程度把握できます)を大きく脅かすものとして、 二酸化炭素の濃度増大などが問題視されているのではないでしょうか。

又、温暖化の進み具合は、北半球と南半球で差があるのでしょうか?

上に述べたことから、わかっていただけると思いますが、 地球温暖化現象は単に温室効果気体の濃度増加による「大気放射の地表面向き成分の増大」ではなく、 陸地の分布、植物の状態、などいろいろな要素が絡んで起きる現象の全体をいっているわけですから、 地球上どこでも一緒と言うほうが不思議なのです。海流の状態、陸地面積の違い、 などいろいろな要素が北半球と南半球では異なっておりますので、温暖化現象の現れ方は異なってきます。