大場満郎隊員の日誌

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2008年5月28日

氷河

この辺りの山々は、岩山だがぼろぼろに崩れて落ち、険しく切り立っている山もあれば、細かな小石がびっしりと山の表面に積み重ねたような状態の山もある。山頂部にぽつんと飛び出している岩も見えるが、これは氷河により削り取られたのではないだろうか。細かな小石が山を包み込んでいるのも、氷河の運動により砕かれたものだろうし、氷河が山々を埋めつくしていたであろう事は想像つく。

今いるパイパーパス(Piper Pass)の東には、グラントアイスキャップ(Grant Ice Cap)という、およそ30km四方の大きな氷冠があり、パイパーパスの氷河湖に3つ噴き出しているうちの2つが流れ込んで、それをさえぎっている。

冬なら鼻が折れ曲がってしまうほどの、マイナス50℃にもなる所だろうが、今は風が肌に心地よく感じる。これらの風は、このアイスキャップが引き起こし、冷たい大気を流し込んでいるものと考えられる。このアイスキャップが、山々から少しずつ消え去っていく話を、イヌイットの人々にも聞いていたし、毎年氷河が後退を続けているのも、現実のことである。

氷河が海に流れ込まなくなってしまうと、気候にも変化が現れるかもしれない。また、イヌイットの人々の中には、氷河から流れ出した氷山の水を、飲料水にしている町や村もある。氷山があるところにはプランクトンが多く、小魚が集まる。その小魚を大きな魚が餌とし、アザラシなどがその魚を食べ、そのアザラシも、ホッキョクグマやイヌイットの人々の大切な食料となっており、食物連鎖の源を作り出しているのも、氷河、氷山の役割であると言えるだろう。氷山を海に送り出している氷河は、天然の美味しい水を提供するばかりでなく、自然界のバランスを保っているのだと思う。

大場 満郎

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