カタバ風
南極大陸やグリーンランド内陸氷床では、カタバ風というものが吹く。
冷たい大気が下流に向かって流れるもので、まるで扇風機(せんぷうき)で吹き付けるような安定した風である。
カタバ風は地形により、その勢いが強まったり弱まったりしている。
グリーンランドは日本の6倍もの面積があり、平均して1600mの厚さの氷が堆積(たいせき)しており、
ひとつの大きな山ではなく、いくつもの山々に長い年月の末、氷が積もっていったように思える。
だから内陸氷床を北上していると、ヌナタック(山の頂上部分)が突然氷床に突き出ていたりする。
南極大陸のようにまっ平らな雪原が続くのとはちょっと違い、山の形をしているのが視覚的に分かるほど、
小高い部分と谷間がくっきりと見える。
晴天の日は、スキー板に引っ掛けて、洗濯物を干す。
地図上に現れている、等高線(とうこうせん)沿いでは谷間を進んでいるような気分になる。
この谷間はとてもなだらかなものだが、カタバ風の勢いは強く、雪面を川の水が勢いよく流れるように雪が滑っていく。
ところが、斜度(しゃど)の大きい谷間では、カタバ風は弱く、上空を吹き抜けていってしまい、
私たちがスキーセーリングをできないほどの風の弱い地帯となってしまう。
見た目には平坦な地形だが、その地形により、素直にカタバ風は3000mほどの高い氷床から海へ向かって吹き降ろすのだ。
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