2004年6月10日

カーナークの町

グリーンランド西岸の北部にカーナークという町がある。私たちは6月6日のピックアップで飛行機にてカーナークに入り、滞在中である。 カーナークは20年ほど前の4月頃に一度入っているが、今は霧の多い日が続く。町のすぐ裏山から内陸氷床が続き、 海に面した山の斜面に家々が立ち並んでいる。斜面の勾配(こうばい)が15度ほどもあり、道を歩くと山登りをしているようなほどである。 この斜面に小さくこじんまりした赤、黄、緑、青と様々な色の家が建ち並ぶ。

海のすぐそばに役場や郵便局、スーパーなど公的な建物が続き、新しく家を建てた大島トクちゃんの家は、 山の一番高い場所に斜面を削ったところに建っている。トクちゃんはデンマーク人のボーイフレンドと一緒に住んでいるが、 家はデンマーク政府から材料を安く買い、自分たちで建設するとのこと。高床式にしてパネルを組み立てる作りになっており、 家によって違うが、比較的大きな家はなく、小さな家である。

カーナークの人口は780人ほどだ。まだ海は凍結しており、氷河から流れ出た大きな氷山が所々に見られ、 湾を挟む形で内陸氷床も遠望(えんぼう)できる。今の時期、カーナークの町を背にする山の雪は消え去り、 高い所にいくらかへばりついている程度で、道路や家の周囲はすべて溶け、 砂利(じゃり)や石が現れ、車が走ると土埃(つちぼこり)が立つほどだ。

白夜の時期なので、夜中の12時頃でも子供たちの外で遊ぶ姿が見られる。 道端や家の周囲の地面には、ネコヤナギに似た、地を這うような枝の先に頭を出した、 紫の薄くて小さな花が咲いている。 所々に青い草やコケも生えており、夏にのびる枯れた草も至る所に見られる。 道を歩いていると家の前や空き地には犬が飼われており、 放し飼いの犬もいる。これは子犬やお腹の大きな犬などで、そりを引く元気な犬たちは海岸の氷の上にまとめて集めて飼われており、 しきりに鳴き声が聞こえている。

70kmほど北にあるシオラパルクの漁師がイッカク4頭分をソリに積みカーナークの町に売りに来ているので見に行く。 海が開いているのでボートと犬ぞりの両方を用いてやってきたと話す。カーナークの人々は海岸まで歩いて、 このイッカクの皮(マッタ)を買っていた。このカーナークにホテルが一つあり、ハンズさんという方がオーナーとのこと。 ハンズさんも私のことを知っており、20年前私を家に泊めてくださっている方である。今はウパナビックに行っているが、 天候状態が悪く、飛行機が飛べず、動けないとのことで、6月はカーナークを始めグリーンランド西岸の北部の町は、霧が発生したり、 天候状態が悪いとのことである。

グリーンランドには、二人の日本人が結婚して住んでいる。シオラパルクの大島育雄さんと佐紀子さんである。 同じモンゴロイドのイヌイットと日本人、顔、姿もそっくりでまったく違和感がなく、外国に来ている感覚はない。 今後ますます日本とグリーンランドの関係を深めてゆければいいと思う。

    


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