出国
出国日となった今日。いつも以上に、朝からあわただしく準備が始まった。
最後の荷詰めやチェックがまだ完全ではないというのに、事務局を出る予定をしていた15時はあっという間に迫ってきた。
そして15時をまわると、急いでタクシーに飛び乗って京成上野駅へ向かった。
悪天候にもかかわらず京成上野駅には、日本通運青山航空支店の小池支店長と田中次長が私たちを待っていて下さった。
上野駅発15:20のスカイライナーに乗ると、ちょうど1時間で成田空港第2ターミナルビルに着いた。
エア・カナダのチェック・イン・カウンターへ向かうと、
テレビ東京・日本テレビ・TBS・共同通信・毎日新聞・河北新聞などの報道陣と両親が私たちの到着を待っていてくれた。
私たちは、7つの荷物を貨物室へ、残り7つの荷物を手荷物としてチェック・インした。
その後、私はこれから使う約4ヶ月分のお金をカナダ・ドルに換金に行った。大汗をかいたまま出国時刻を迎える。
テレビ東京『ザ・ヒューマンD』製作のため、準備段階から私たちを追ってくれていたディレクターの上田さんが「これが最後の汗かもよ」などと冗談を言った。
「カナダでかくのは、今度は冷や汗かもよ」などと、更に冗談を言った。
これまで毎日準備を一緒にしてきた事務局の岩田さんと宮内さん、報道陣、両親と別れていよいよ出国ゲートへ向かった。
しかし、荷物検査で多くの時間を費やした。バッグの中に放り込んだ工具類が引っかかったのである。
そこで、ひっかかったペンチとカッターは、ゲートを戻って岩田さんたちに渡した。
イミグレーションに入る前には、
100万円分の現金と100万円分のトラベラーズ・チェックの計200万円分をカナダへ持ち出すために税関へ申告した。
無事に出国手続きも終わり、いざ19:00発のAir Canada AC004便に乗り込んだ。
バンクーバーまで、約8時間のフライトだった。バンクーバーに到着したのは、同じ16日の11:00である。
約8時間も乗ったのに、出国した日時よりも更に早い日時に到着し、不思議な感覚である。
バンクーバーで入国手続きの後、全ての荷物を受け取って12:30発のAir Canada AC238便に乗り換えなければならない。
しかし、イミグレーションでは長蛇の列。私は、高額現金持込の申請を。ホヴァートは、多くの薬を持ち込んでいるので、
その申請をしなければならない。そこで、英語が達者なホヴァートが、スムーズにイミグレーションへ向かえるように手配してくれた。
大場さんとステパンは、スムーズに乗り換えられるものの、薬と現金を申請しなければならないホヴァートと私は一足遅れた。
179cmもある28歳のホバートは、大きなリュック背負っても大きな歩幅で走っていく。
162cmで33歳の私も、負けるわけにはいかない。バンクーバーで再び大汗をかいて、飛行機に乗り込んだ。
喉が渇いたので、機内で飲んだジュースがとてもおいしかった。約2時間半のフライトの後、14:57にエドモントンへ到着した。
そのまま、今夜泊まっているQuality Inn Hotelへ向かった。部屋の清掃がまだ終わってないというので、
カフェでコーヒーを飲みながら待つ。英語が通じる国へ来たからだろうか、
ホバートは水を得た魚のように生き生きとカフェのウエイトレスと話をしている。
2時間ほど自由時間を楽しんだ。私は、バスタブにお湯をためてゆっくり入った。
18時に再びカフェに集まると、夕食をとりながらミーティングをした。明日、たった一つだけ心配事があるのだ。
それは、ケンボレック・エアが運航するケンブリッジ・ベイからレゾリュート・ベイまでの8人乗りビーチクラフト99という飛行機が、
荷物の総重量が20kgまでとなっているからだ。ところが、機体が小さいから追加料金を払えば荷物を積んでもらえるという訳ではない。
出国前日に届いたテントや寝袋、パソコンや多くのバッテリー類を入れると、一人当たり規定の倍の荷物を持っているのだ。
みんな、どうにかなるだろうといって解散した。日本からはシングル・ルームを予約していたが、
ダブル・ベッドがツインになっている部屋に一人で泊まるという豪華さの中でカナダの初夜を迎えた。
小林丈一
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