2005年2月22日

トレーニング

私の朝一発目の仕事は、CO-OPまでライフルの銃弾を買いに行くことだった。 遠征隊のクマ対策で使うライフル用である。しかし、遠征隊は万が一熊と遭遇しても、 直接シロクマに銃口を向けることはない。上空へ向けるか、足元へ向けて威嚇射撃を行う。 それでも突進してきて、隊員が命の危機を感じた時のみ「ごめんなさい」である。

16日にレゾリュート・ベイに入ってから6日目の今日、初めて風が吹いた。 しかし、それは単なる風以上の吹雪だった。遠征隊の3人(大場・ステパン・ホヴァート)は、 ソリを引きながらスキー・セール(風を受けて引っ張ってくれるパラシュートのようなもの)のテストを行なった。

大場さんは、南極横断と昨年のグリーンランド縦断でスキー・セールを使用したためベテランである。 またステパンとホヴァートも昨年末に、ノルウェーで約2週間のトレーニングをしてきたので問題なく操れるようだ。

今の時期、太陽はまだ高くまで昇ることなく、水平線(真っ白な世界なので、どこまでが陸で、 どこからが海なのか分からないが、方向からいうと海である)に沿うようにわずかに上がって移動する。 その薄暗い中、テストを行なった。私も、一緒に行動した。 遠征隊がいかに厳しい自然の中に身を置くのかを、身をもって体験したかったからである。 そうすることによって、不測事態や緊急時のイメージが湧きやすくなるのだ。 いわば、ベースマネージャーの私にとってもトレーニングである。

吹雪の日の気温は大きく下がらないらしく、今日で−25℃程度だ。 しかし、風が強い分体感温度はとても低く感じる。 ダウンジャケットのフードを被ってゴーグルで目を守るが、頬だけが風を受けてしまった。 わずか2時間程度吹雪の中にいただけなのに、風にさらされていた左側の頬は軽い凍傷になった。 確かに長い時間ではなかったが、風にあたっている間の感覚は、寒い・冷たいというよりも痛いといった方が的確かもしれない。

遠征隊が28日にスタートするワード・ハント島は、ここから更に北にある。遠征中は、 たった1本の木もなく、身を隠すところさえない。唯一安心できるのは、夕方に張るテントの中だけである。

ホヴァート(28歳・ノルウェー)
雪がまつ毛に、吐息が氷になってヒゲについている。
彼は裁縫が好きで、衣類や装具を手直しして遠征に備えている。

小林丈一    


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