2005年3月17日

Kamiks・カミックス

朝9:50に遠征隊から電話があった。位置は北緯82度54分・西経70度54分で、進んだ距離は3.5km。 気温−40℃でかなり低かったが、快晴で風はないようだった。 遠征隊は、北極海からフィヨルドに入り南下を目指す予定だったが、 想像以上に進路上の傾斜がきつくてこれ以上は進めず、 とりあえず北極海まで戻りながら次のルートを考えるとのことだった。

今日は、イヌイット伝統のブーツ(カミックス)と手袋を紹介する。

カナダ最北端の村 グリス・フィヨルドからきていたレイミーキー(Laymeekee)さん

ここレゾリュート・ベイはグリス・フィヨルドの一つ南の村である。 つまり、北から2番目の村ということになる。

この模様は、とくべつな地位や家紋をあらわすわけではなく、ただの模様

このブーツは4重になっている。
履いていく順番に、左下からアリクシク(Aliksik)・左上右上ともにピニギャク(Piniqgaq)・右下カミック(Kamik)。 そして、この4足を合わせてカミックス(Kamiks)

英語では、ダッフル・ソックスという。 日本でいえば、フェルト地にあたるだろうか。

上から内部を撮影

2番目に履くのはリング・シールの皮
輪模様がついたアザラシのことである。

上から撮影

3番目に履くのもリング・シールの皮

上から内部を撮影
皮の裁断デザインをよく見ていただきたい。

3重に履くとこのようになる。

最後に一番上に履くブーツ
刻み模様がないソールは、踏み固められた雪の上だと滑りやすそうに見える。 逆に新雪の上は気持ちよく歩けそうだ。 古い時代、ソールに使う皮を噛んで柔らかくしたのは、女性の仕事だった。

この地域で新雪の上を歩くと、まるで太鼓の皮の上に雪が積もり、 その上を歩いているかのように踏んだ雪の音がこだまする。 湿度が低く極度に低温のため、雪は非常に細かい粒子でサラサラしている。 あるいは、パサパサしているともいえる。

毛皮と甲の黄色い皮の部分は、リング・シール
そこの部分は、大きなひげのあるビエディド・シール(bearded Seal)の皮

日本では「ごまちゃん」こと「ごまあざらし」など、アザラシ科の動物はとても可愛らしいイメージがある。 しかし、北極地域ではアザラシの肉は貴重な食糧になり、皮は帽子・手袋・上下衣・ブーツなどに加工される。 村では、なんと凍ったアザラシがスノーモービルに引きずられているのを目にする。

カミックスを上から撮影

次はアザラシの毛皮で作ったミトン手袋

5本指に分かれている手袋よりも、このような形の方が温かい。 それは、それぞれの指の温度が、4本一緒にまとまるからである。

アザラシの毛皮を触ると、硬くトゲトゲしい感じである。 しかし、毛の一本一本の中は空洞になっており、そこにアザラシの体温が温存されるという。 ピンク色のものはフリース地で、二重になっている。 手首のところにシロクマの毛皮を縫いつけたものや、ひじ下までの長さのものもある。

小林丈一    


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