見えなかったものが見えてきた - 氷床体験
ナルサスアックでの準備を終え、いよいよ縦断の始まりです。
氷床へ向かうヘリコプターから見た風景は、あまりの迫力に息が止まるほどでした。
雪が解け、山肌の見え始めた岩山を超えていくと、突然景色が開け、青い氷河が目に入ってきました。
晴れた日の青空のようなブルーでした。
岩山を超えると広大な氷河が見えてきた。
まさにブルー・アイス、神秘的な青色をしている。
スタート・ポイントに近づいていくと、一瞬視界が真っ白になり、その直後、黒い点のような二人を見つけました。
ホワイトアウトがかかり、天候が数秒ごとに変化する氷床では、ゆっくり別れを惜しむ暇もありませんでした。
氷床に降り立った大場、長谷隊員。
私が氷床に降り立ったのは、時間にして10分もありませんでした。でも、そのとき感じた物言わぬ自然の迫力、
説得力は、万感巻(ばんかん)の書を読んでも得られないもの、意識の中の何かのスイッチをオンにしたような感覚がありました。
スタート地点で記念撮影。
地球に、こんな場所があるなんて、本当に今まで知りませんでした。
ヘリコプターで空からグリーンランドの大地を食い入るように見つめました。
一瞬でも目をつぶりたくないほど、心をつかまれました。
そのとき、まるで地球がある種の感情を持っていて、私たち人間の野放図(のほうず)な欲望をただただ無言で受け止め、
無言で傷ついているようだ、という想像が頭をよぎりました。
でもそれはやがていつか大きなうねりとなって、ありとあらゆる人間の所業(しょぎょう)の結果を、
教え知らしめにくるのではないか、そんな気がしました。
上空からみた氷河、地球が生き物のように見えた。
言葉にならない地球からのメッセージ、SOSは、きっと、地球上どこにいても受信可能なはず!
「地球縦回り一周の旅」が、地球を6年かけて回りながら、自然からのSOSを受信し、
人々の暮らしの中から共生へのヒントを探しだす手がかりになることを願ってやみません。
無事、ナルサスアックの街に帰ってきた。
今日の氷床へのフライトのパイロット、Arneさんにこの計画を話したら、
「早く北極をやらないと、氷が溶けちゃうかもしれないよ、急がなきゃ。」と言われました。
そんなことにならないように!
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