皇太子殿下ご成婚
デンマーク王国のフレデリック皇太子が、オーストラリア、タスマニア島出身の女性と結婚するというニュースは、
デンマーク王国に属するグリーンランドの人々にとっては一大イベントで、私たちがグリーンランドに着いた4月はじめから、
新聞やテレビはこのご成婚(せいこん)のことを騒ぎ立てていた。女王には、もう一人の息子、ヨアキム王子がいるが、
その夫人はオーストリアと香港の混血ということで、デンマーク王室は、かなり国際色豊かなようだ。
フレデリック皇太子と、皇太子妃マリー。
家々は国旗を立ててお祝いムードになり、どの家に遊びに行っても、店に買い物に行っても、
コーヒーとケーキなどのお菓子をふるまってくれた。ニャーコンネでなにかと世話を焼いてくれたのは、"ICE SCHOOL"のリーダー、
ウナトックの妻のアニだった。アニの生家(せいか)はニャーコンネにあり、母親が一人で暮らしている。
アニは夫のウナトックを見送りに来て母親の実家に泊まっていたので、私もそこに滞在させてもらったり、ご飯を食べさせてもらったりした。
アニは、どんどんグリーンランド語で話しかけてくる。不思議なことに、アニの場合は特に、言葉が通じなくても、
何となく言いたいことがわかるし、私の言いたいこともわかってもらえた。
アニの母、ユーディテの部屋。 特にニャーコンネでは、どこの家も壁いっぱいに家族や親戚の写真が飾られていた。
アニも、アニの母のユーディテも、ヌカーガという親類の女性も、朝からロイヤル・ウェディングの様子を、コーヒーを飲み、
ケーキを食べながら、テレビにかじりつくようにして見ていた。みんなが家に入っていて、テレビを見ていたようで、
この日のニャーコンネは、いつにもまして静かだった。
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ユーディテの孫のヌーヌングワが、車椅子のタイヤの修理にやってきた。
ユーディテは脳梗塞で倒れてから半身が不自由で、車椅子で生活している。
家の玄関前には木で作られたスロープがあった。
アニがいないときは、何人かの近所に住む女性たちが代わる代わるやってきて、
日常生活を手助けしていた。
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ビー玉遊びをする子供たち。
5匹の子犬と、母犬。
子犬たちは4月7日生まれ。
エスタングワの子犬。エスタングワは15才。 ユーディテの孫で、ヌーヌングワの妹。エキゾチックな美貌の持ち主。
夕方、ブーユと一緒に古い墓地のある岩山に登った。オリョウによると、最高に眺めのいい景色の場所に葬(ほうむ)ると、
死者は安らかに眠れると言われているそうだ。十字架は海に向かう、まさに海から登る朝日が眺められる場所に立っていた。
岩山の上に立つ墓地。 亡くなった人たちが、眺めのいい場所で、安らかに眠る。
山の上から見たニャーコンネ。
オリョウやアリバットは、ロイヤル・ウェディングには、まるで関心を示していなかったけれど、お祝いだということで、
ご馳走(ちそう)をつくった。オリョウはクジラ肉のバター風味のステーキ、アリバットは丸ごとの50cmの大きなマスをグリルした。
付け合わせの米を炊(た)くのが私の担当になった。グリーンランドには当然炊飯(すいはん)器はないから、
火加減を見ながら、鍋でご飯を炊く。グリーンランドに来て、何度もやっているうちに、大分要領(ようりょう)を得てきた。
午前0時のニャーコンネの海。太陽は夜も輝く。
結局、ボートのモーターは今日も直らず、オリョウは部品をヌークから取り寄せることにした。その部品が届くのは、
私がニャーコンネを発つ日と同じ、次のヘリコプターが到着するとき。彼らも、私と同じく、この村で足止めとなることが決まった。
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