2004年4月26日

タシーラクの一日

午前3時頃、ふと起きて窓から外を見ると、うっすらと白みはじめた空のもとには、 ぽつぽつ家々の灯りがともっていた。音のない、静かな夜明けに、 寝ぼけ眼をこすりながら外に出た。冷たい空気で深呼吸すると、細胞が生き返るようだった。


音ひとつない静寂の中、夜が明けていった。


タシーラクの清々しい朝。
冷たい澄んだ空気が体にしみこんでくる。

昼間の気温は高く、シャツに、風をよけてくれるジェケットで十分のあたたかさだ。 雪も溶けて、あちこちに地面が見え隠れしている。海には、 北から流れてきた平べったい氷がプカプカ浮いている。 その氷の上に乗って、シロクマが海を旅して、東海岸に流れ着いてくることもあるのだという。 アザラシも、魚も氷とともにやってくるのだそうだ。


旅する氷。
シロクマも時には氷に乗って旅をするという。

タシーラク、クルサックの辺りは、去年と今年、海がほとんど凍らなかったという。 氷河も年々後退しているという話も聞いた。ここ5、6年その変化が顕著(けんちょ)になってきたそうだ。 地元の人に、それは地球温暖化のせい?と聞くと、 長いグリーンランドの歴史の中には数年温暖な年が続いたり、 逆に極端に寒冷になったりした時期もあったから、果たしてこれが地球温暖化のせいなのか、 それとも「たまたま」なのか、自分たちには何とも言えないということだった。

夕ご飯は佐紀子さん特製のクジラのスープが待っていた。だしはクジラからでた旨味(うまみ)なのに、 驚くほどコクがある。クジラの皮に近い部分はぷりぷりとしていて、マスタードとの相性が抜群で、 おいしいし、美肌効果もあるらしい。


クジラのスープ。中にはお米も入っている。コクがあっておいしい。


クジラ肉(皮に近い部分)。マスタードと相性がいい。

パニパックに、日本食が恋しいか?と聞かれた。グリーンランドの食べ物がおいしいから大丈夫だ、 と言ったら笑っていた。グリーンランドではメインの肉料理の付け合わせに、よく白米を食べるので、 日本にいるときの食事とそれほど変わらないのだ。昔、 ジャガイモが高級だったときに安い米を食べ始めた名残で、白米を食べる習慣が残ったのだそうだ。

スーパーに行くと、何種類もの米が揃えてある。日本でもなかなか手に入らないような長い、 赤い色をした原種の米まであった(ネイティブ・アメリカンの米らしい)。 日本で食べるのと同じ米は「スシライス」という名前で、ちょっと高めの値段で棚に並んでいた。

夜8時と言ってもまだまだ明るく、ご飯を食べてから外に遊びに出かける子供たちもいる。 夜9時をすぎると、ようやく夕焼けがやってきた。


夕方、佐紀子さんの家の近くで出会った子犬。
黒のグリーンランド・ハスキー犬である。


向こうから近づいてきた。カメラに興味津々。


夕刻時のタシーラク。昼間とは違った表情を見せる。

同じ町の風景でも、太陽の傾きでまるで違ってみえ、様々な景色を楽しめたせいか、 なんだか得した気分で眠りについた。

    


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